2018年10月25日

関西で言う『しんどい』は、疲れる・疲れた
という意味でR(あ~る)★
みたいなネット記事を読んだ。

そうなのか?

なら、私が使う『しんどい』とは少しニュアンスが違うような。

もう、まったくの東京人(江戸っ子)なんていないだろうし、江戸っ子にも『てやんでい!』みたいな言葉があるし、
この水元にも水元言葉があるらしい。
で、よく言われるのが「口が悪い」。

自覚なし。

ただ、練馬ナンバーあたりの方とお話をすると、

ずいぶんやんわり上品に話すんだなぁ…

とは思う。
環七あたりを練馬ナンバーが走っていると、

ったく練馬だよっ

舌打ちが出る。


私が育った家は、じいさんが茨城出身で、なので他所では「???」な言葉を標準語と思って使っていた。
弟なんかは、
あれは20代の頃。
弟が二十歳そこそこ、私は20代半ばくらい?
ある日突然

「あ~ しっぷい」

とな。

え、え、なんて? しっぷい??

「なんか、分かる? この感じ。しっぷいって感じ」。

ダラリと力のないポーズで、力のない目を私に向ける。
昼休みが終わり、これから午後の仕事。
やる気もなけりゃ体も重い。

=しっぷい

らしい。

標準語や方言を通り越して、まったくオリジナルな弟言葉なのだが、弟との会話では今でも『しっぷい』を使う。

ちょっとIQ高かったんだよね、弟。
たぶん天才バカボン。


さて、
『しんどい』。

私の中での『疲れた』や関西人が言う『しんどい』は、
何かが終わってため息混じりに出る言葉。
つまり疲れるのはそこまで。
けど、
私が使う『しんどい』は、
のらりくらりとどこまでも続くダルさ。
だから仕事を終えてビール飲みながら相撲中継見ている時も『しんどい』、風呂に入って体を洗っている時も『しんどい』、髪を乾かすのも『しんどい』。
しんどくないのは寝ている時だけ。
朝が来ればまた『しんどい』。

つまり生きている限りしんどいのです。


父が残してくれた小さなアパートの、私は大家さんでもあるのだが、
先日の休みにちょこっと大家仕事があり、アパートに行った。

外階段を上がろうとしたら、
1階奥のYさんが、玄関前でうんこ座りをしてタバコを吸っていた。

うちは店子さん全員生活保護の方なのだが、Yさん宅だけ2人暮らし。

やや寝たきりの難病の娘さんがいる。

Yさん自身も3年くらい前に癌になり、手術をしたとか何とか、不動産屋から聞いていた。
1年前には再発し、また入院して、退院した今も抗がん剤治療は続いている。

小柄で痩せていて、肌は日焼けなのか黒く、
気さくな下町のおばちゃんであるYさんは、2階から一歩ずつ慎重に降りる私に

「気をつけてよ~」

笑いながら声をかけてくれた。

ショートにした髪は半分白髪、細いレギンスのような黒のパンツに長袖のロンT。
タバコを携帯灰皿に押し込め、うんこ座りから立ち上がる。
ウーピー・ゴールドバーグが痩せてしぼんだ感じの顔が、人懐こそうに笑っていた。

「体調の方はどうですか?」

「うん、お陰様で心臓の方も問題ないのよ」

ぇえー、心臓も悪かったの!?

「癌はね、これもう一生付き合ってくもんだから、まぁ薬飲みながらね

「うんうん、もう年いくと何かしら病気は抱えてますよね、薬飲みながら皆なんとか、ね」

で、寝たきりにはなりたくないから歩いてる
とか、
歩くのがいちばんよ、走れないし
とか、
この前 出先で用を思い出して走ったら、口から内臓出そうでした!

なんつってゲラゲラ笑い、

そうしていたら、1階手前のKさんが部屋から出てきた。

Kさんは若いうちに脳卒中をおこし、少し麻痺が残っている。
のんびり話せば普通にお話も出来るのだが、玄関にも車椅子にも『失語症です』と書いた紙を貼っている。

ゴミ出しに出てきたKさん、
「お話の途中でお邪魔しちゃって」と、そのまま部屋に戻ろうとすると、

「いいじゃない、内緒話じゃないんだし、たまには一緒にお喋りしましょうよ」

と、Yさんが誘う。

手押しの車椅子の話をするKさんと、電動車椅子の話をするYさん、
当然噛み合わないのだが、気づいているのは私だけで、2人ともうんうんと自分に頷いている。

そのうちに私のスマホから音楽が流れ、それはサイダーバのメール配信時間のアラームだったのだが、
そこで解散。


元々血圧が低く、心臓発作をおこしたことがあるらしいYさん、通院し、投薬治療もしているが、もう60代半ば。
若くして脳卒中で麻痺が残り、日々リハビリに通うKさん。
先日脳内出血で入院した福島の友達は、昨日めまいが止まらずまた検査入院したらしい。

誰もが、いつそっと旅立ってもおかしくなくて、
だから今日、命あるだけで、それはとてもラッキーなんだ。
そう思う。

ラッキーではあるけれど、
しんどいなぁ、とも、つくづく思う。


アラームの音楽はグリムスパンキー。
途中で止めて、パパに電話をする。

「はい、サイダーバでございます」

「マツリカのお姉さんでーす」

「ああ、お姉さん、こんにちは!」

いつものやりとり。

パパだって、心臓に糖尿にあと何だっけ?
何種類もの薬にお世話になりながら、毎日時間をかけてじっくり丁寧に美味しいカレーを作る。

その日々の1日1日がラッキーで、
途方もなくしんどいのだ。

ラッキーでしんどい、
それが人生なのだ。


Matulikomatulika33 at 15:41│コメント(0)つれづれ物語 │

コメントする

名前
 
  絵文字